スペシャルキッズの育児と暮らしについて、働きながら子育てをするママさんのブログを転載させていただいています。
「産業医もいもい先生の子育てノート 〜気切っ子おもちくんとともに〜」
2020年2月よりnoteにて投稿されている記事の一部を、チャーミングケアモールでも転載させていただいています。
第1回チャーミングケアモールアンバサダー会議により、初期の記事より時系列に記事をチョイスさせていただきました。
とても優しくほっこりする文体が魅力的な「もいもい先生」の育児ノートを是非ご一読ください。
子供が3人。
両手で手を繋いでも1人余る人数。
想像以上に3人の予定がテトリス状態です。上ふたりの学校や習い事の予定に、末息子、おもちくんの面会と1日5回の搾乳を組み込むと、それはそれはもうテトリス。しかも横一列に綺麗に並ばない消えていかないやつ。テトリスを並べるようにスケジュールのすき間を掻い潜り、おもちくんとの短い逢瀬に向かいます。
引くほどの大荷物です。数日分の冷凍母乳、おおよそ3㎏ほどの入った巨大な保冷バッグ。肌着が5枚。ガーゼハンカチ10枚。忘れちゃならないアンパンマンのしゃかしゃかボール。(もいもいはベッドサイドに常駐)
巨大な荷物を抱えて、怖い顔で息を切らせて、しかもバッグが歩く度に何だかシャカシャカ言う小柄なオバサン。傍から見るとかなりアレですが、致し方ない。
しかも、この日は生まれて3か月、3回目の抱っこの日でした。
肺に疾患を抱えたおもちくん。
産声を上げたのちすぐに挿管され、呼吸器につながれています。
一言「だっこ」といっても、おもちくんの治療やケア、新生児科の主治医、NICUの担当看護師さん、母の私のスケジュール調整をしなくてはなりません。4人のスケジュール調整、結構大変。
そもそも、おもちくんが低空飛行なりに落ち着いている状態、というのが大前提です。全部ひっくるめて、めちゃくちゃ大変。
しかし母は抱きたい。息子を。
新生児用のつめきりハサミ。
それは刃渡り1cm足らずにして、何故かやたらと切れ味抜群のハサミである。
我が息子・おもちくんのいるNICUでは、爪切りは父母の仕事である。
愛着形成とかそういうものの為かもしれないが、我が子にしてあげられる仕事をもらえるのは、なかなか嬉しいもの。
まるでお手伝いを頼まれた幼子のように意気揚々と、生後1週間頃から毎日つめきりハサミを持参していたのだが。
爪が伸びない。
生まれ落ちたその日から、いわば死線をくぐり抜けてきたおもちくん。病によるストレスか何か、爪が伸びないのである。
使えなかったつめきりハサミを握り締め、しょんぼりと帰宅する日々。
しかし生後1ヶ月を過ぎた頃だろうか。
低空飛行ではあるものの、体調が徐々に安定し、十二指腸へ通した管から母乳が入り始めたあたり。
少しずつであるが、爪が伸び始めたのである。
成長曲線なぞガン無視のマイペースな発育。
月齢に見合わない、小さな小さな爪。
冬に鎌倉の海岸で拾う、さくら貝のような爪。
その小さな爪を、やたらていねいに、爪の切れ端をハサミの刃ですくい上げるように切り、傍に置いたガーゼの上にそっと運ぶ。
単調な、反復仕事。
やわらかなおもちくんの指に、心がぽわっとする。
抱っこ(なかなか出来ないが)とはまた違う、温かで穏やかな時間。
しあわせを噛み締めている。